#お前の描くこのCPが見てみたい➀【タグお題】



著:結城隆臣




刀剣乱舞の二次作になります。
タグお題です。




清さにです。リプありがとうございました。
流血・暴力的表現が含まれますご注意ください。




※刀剣乱舞の世界観の自己解釈と、マイ設定があります。
※史実に忠実ではありません。
※いろいろ都合よく解釈しています。ご注意ください。














「えっ。お見合い?」
「そっ、正確には―……婚活パーティ」




何ヶ月ぶりかわからない位久しぶりに主の近侍に付いた俺が一番最初に主から聞いた言葉が『明日、お見合いに行かなきゃいけないんだよねー』だった。




あまりの衝撃に開いた口が塞がらない。
主の髪をまとめようと梳いていた手も止まる。
当たり前だ、俺は主のことが好きなんだから。
好きな人が見合い……だなんてそんなの、ショック以外の他にない。




そんな俺をよそに主がため息とともに言葉を続けていく。




「政府から通達が来てね、女性の審神者は結婚を機に力を失う場合が多いんだって、で、そのせいでなくなっちゃう本丸が多すぎて、戦力の維持のためにも結婚相手も審神者にした方がいいって話になったらしくて。それなら力を失ってしまっても、旦那さんが両方の本丸を見ればいいから大丈夫だろ―って感じで」
「へ、へぇ……そうなんだ」




目の前で子供の様にほほを膨らませる主に、俺は何とか苦笑を浮かべて返事をする。




主は俺の気持ちに全く気付いていない。
だからこそこんな話をしてくるんだろうけど、主が審神者になってからずっと近侍を続けて来て、それなりにアピールもしてきたつもりだったから、結構来るものがあるなぁなんて思ったり。




そして、その次のセリフで俺は完全に固まった。




「もーこれで8回目よ、8回目! さすがに行きたくなくなるよね……」
「……え?」




さすがに主も俺の様子に気付いたのか振り返る。




「どうしたの? 加州、顔怖いけど」
「え? ああ……ごめん。でも、8回目って……そんなに行ってたの? 俺全然知らなかったんだけど……」
「ああー」




申し訳なさそうな表情を浮かべる主。




「ごめん、何か恥ずかしくて先日まで近侍をしていた歌仙にしか話してなかったんだ……」
「そうだったんだ……」
「ごめんね、ごめん。初期刀だしずっと近侍しててくれた加州にも相談しておくべきだったね」
「いや、いいよ。俺、レベルカンストして新人教育担当になってたし、ここ最近お互い忙しかったし、話す時間なんてなかったじゃん」




そう、久しぶりだなぁって思うくらい、主と話をしていなかったのだから、仕方がない。




この主がいる本丸は比較的安定した戦地にあり、高練度の者が活躍する場面はほとんどなかった。
そのため、練度が上がり切った俺は第一部隊から外され、第四部隊で新人の練度上げの教育係りになっていた。




俺の後任で近侍に付いたのは練度が低い歌仙兼定。
近侍になると練度の上昇が早まる効果があるらしく、そのために抜擢されたらしい。
主曰く、江戸への出撃の任が来たから、歌仙を育てないといけないって話だったと思う。
でも、それでも……ずっとずーっと近侍でいたのは俺なんだから、できれば一言相談してほしかったなと、思ってしまう。
久しぶりに近侍に戻れて、主の側にいられて嬉しかったのに、その気持ちがしゅんと縮んでいく。




「――だったんだけど……、私さ、背が高いじゃない? 175cm……大倶利伽羅とか歌仙と同じくらいあるから、やっぱり引かれちゃうみたいでお見合い行っても、話してくれる人なんていないんだよね。ドレスアップでハイヒールなんか履いたら、180cm位余裕で行くし……浮いちゃって……」




しょんぼりと肩を落とす主に気付いて、俺は首を振った。




「身長なんて関係ないよ」
「私もそう思ってたんだけど……モデルさんみたいですねで終わり。燭台切や和泉守以上の身長の男性なんてほぼいないし……」




背中を丸めて悲しそうに首を垂れる主の背中をばしんと俺は叩いた。
そう、身長なんて関係ない。
だって、事実俺が主のことを好きになっているんだから。




「ほらまた猫背になってる!! シャキッとしなよ。カッコ悪くなるよ」
「でもー……」
「でもじゃない。前にも言ったよね背が高いことを気にして猫背にしていたら見た目が悪くなるって。シャキッとして堂々としているから美しく見えるんだって。モデルさんみたいですねって言われたんだったらさ、良かったじゃん、褒められたってことだよ。きっと、主が美しすぎて声をかけられなかっただけだよ」
「そうかなぁ」
「そうだよ」
「……ありがとう、加州。そう思うことにする」




主がふわりと花が咲くような笑みを浮かべる。




「―――っ」




その様子に俺の心臓がドクンと強く脈打った。




主は確かに背が高い、けどこんなに可愛らしい女性なのに、たったそれだけで除外されるなんておかしい。
だけど……。
だけど、主が選ばれなくて良かったってちょっとだけホッとしてるなんて言ったら主は困るだろうな……。




そんなことを思いながら主の髪を整えて、その両肩をポンと叩いた。




「はい、終わり」
「ありがとう、加州。やっぱり加州に髪を結って貰うの好きだなぁ。きれいにまとめてくれる」
「どういたしまして」
「ねぇ加州。明日、私の事デコってくれない? 加州がやってくれたらきっと百人力だと思う」




主がニコニコと笑いながらこっちに振り返る。




「えっ……」
「歳も歳だし、お見合い常連みたいになってきているし、いい加減次で終わらせたい。だから、お願い!」




必死になって頭を下げる主。
それを見ている俺の手は何故か汗がにじんで、口の中もみるみる乾いていった。
主は俺のことを刀としか見ていない、そんなことは知っている。
俺が主のことをどう思ってるかも知らない、そんなことは知っている。
でも……。
主を他の奴に譲るための化粧を俺がするの?
その事実がずんと俺の心を抉る。




「ダメ……?」
「……わ、わかった……。じゃぁ、明日朝に部屋に行くね」
「ありがとう!!」




どんな顔をして言ったのか、わからない。
分かったって言えただけでも十分じゃないのかな……。




「化粧道具、片付けてくるね」
「うん」




主の部屋を出た後、主に聞こえないよう気を付けながら大きくため息を吐いた。








その日の晩、俺は歌仙兼定と和泉守兼定のダブル兼定に呼び出しを食らった。
主から見合いの話を聞かされてからというもの、心落ち着く余裕が無くて珍しくミスを繰り返し散々だったからさっさと寝たかったのに。
案の定二人の話の内容はそのミスについてのことだった。




ベテラン近侍が何をやっていると叱る歌仙に対し、久々だったんだから仕方ないよなと慰めてくる和泉守。
黙って聞いているうちに、ダブル兼定が俺のことで言い合いになって、結局俺が止める羽目になった。




多分自棄になってたんだと思う。
俺は今日主に言われたことをぽつぽつと話し始めた。




もちろん、みんなに黙ってた主に対する俺の気持ちも、全て包み隠さず。




二人の兼定は驚いたような表情を一瞬浮かべた後、顔を見合わせて大きく頷いてみせた。




「見合いの会場ってどこだ? 知ってるのか?」
「いや、聞いていないけど……」
「多分前回と同じ場所だろう。いつもそこでやっていると聞いたからね」




二人の意図がわからず、俺は首を傾げた。
歌仙が顎に手を当てながら腕を組む。




「確か登録制のものではなく、審神者であれば飛び入りも許されたはずだ」




『ほほう……』と言いながら和泉守がしめたとばかりにニヤリと笑う。
それを見た歌仙も不敵に笑みを浮かべた。




「清光、お前、ちょっと変装とかしてみねぇ?」
「変装? なんで」
「変装して見合いの席に紛れ込むんだよ、君が」
「ええっ。いやだよ、主が誰かに口説かれているところを見て来いって言うの?」
「違わい! お前が主を口説いて来いって言ってんだよ」
「はぁ?」




全く訳が分からない。
なんで俺が見合いで主を口説かなきゃいけない?
まるで主を騙すみたいじゃないか。




目を丸くしていると、歌仙がずいっと身を乗り出してこちらを見てきた。




「主を騙すみたいで心苦しいかい? でも、好きなのだろう? 主のことが。取られたくないのだろう? 他の誰にも」




一瞬見透かされたかと思ってドキッとしたけど、確かにその通りで、俺はゆっくり頷いた。




「そりゃ……そうだけど……」
「そらみろ。だから、見合いの席でお前が主を口説いて連れて帰ってくればいいじゃねーかって言ってんの」
「なんで!?」




俺は叫んだ。




何を言っているんだこの兼定たちは。
他人事だと思って……そんなの出来るわけがないじゃないか、バレたらどうするんだよ……。




「何だよ、怖気づいたか?」




ニヤニヤと和泉守が笑う。




「そんなわけないだろ!!」




反射的に立ち上がってしまって、妙に恥ずかしくなって座りながらそっぽを向いた。




「へへっ、その意気だぜ! 清光!」
「どうなっても知らないよ、もう……」
「大丈夫、僕が腕によりをかけて君を変装させてあげるよ。僕は文系だからね、雅な事は得意なのさ。君はいつも洋装だから……そうだね、素晴らしい和装を用意してあげよう」
「わかったよ、わかった……任せる。――ありがとう」




楽しそうな笑みを浮かべる兼定たちに頭を下げて、俺は部屋に戻った。




俺が見合い? 主とお見合い? 主を口説く? 連れて帰る? ああーもう!!!




期待と不安とすべての感情が入り乱れて落ち着かない心が、妙に自分を急かす。




「だーもう!!ばかねさだの奴ら……。寝るっ」




ドキドキする胸を抱きしめるようにして、俺は布団の中にもぐりこんだ。








翌朝、主を自分好みに俺は仕上げた。




深紅のドレスに黒のショール。
長い髪はゆるくまとめてアップに。
そして、黒のミュールテイストのハイヒール。
左手首には金色のチェーン細工の腕時計。




どこをどう見ても、The、俺仕様。
他の誰にも主を奪われたくなくて、こっそり口紅には神力も、含ませた。




だってそうだろ? 好きなんだから。
腹を括った俺の前には向かうところ敵無しな状態だった。




何も知らない主はセクシー系で小悪魔みたいだと大絶賛。
にこにこ笑顔を浮かべてお見合いパーティーへと向かっていった。




そして俺は主を見送った後走って兼定部屋へ向かった。




「急いで」




歌仙が言う。




「分かってらぁ」
「分かってるよ」




歌仙の助手と化した和泉守とほぼ同時に答えた。




さっと髪を切り、オールバックにセットして、化粧もいつもより男勝りな感じに切り替える。




目立つほくろは隠して、目にはカラーコンタクト、イヤリングも取り外ずして質素なものに。




用意された藍染の着物の袖に手を通せば、歌仙が着付けをしてくれながら、やれこの材質がどうの、帯はどこのモノだのと語ってくれたが最早耳には届かない。
バスタオルで体を補正して、ぱっと見、地味目な蜂須賀虎徹のように出来上がった。




「うん、これならもう君だとわからない。行っておいで!」
「健闘を祈ってるぜ!」




二人の兼定が満足げに微笑みながら、俺を送り出してくれた。
後は俺の腕次第。
普段の出撃より緊張する。
大きく息を吸い込んで気合を入れた俺は、お見合いパーティーの会場へ向かった。




審神者の証明は主が持ってたものを弄って適当にごまかし、会場内へ入る。
壁に飾られているスケジュールを見ると、どうやら各自の紹介などはすでに済んでおり、交流会が進んでフリータイムになっていた。




むしろ、俺にとっては好条件だ。
主を捜しながらゆっくりと目立たないように気を付けて会場内を進む。
案の定、主は壁を飾る一輪の花状態になっていた。




やや絶望した表情を浮かべ、俯きがちにたたずんでいる。
ハイヒールのせいで有に180を超えた主は、悪目立ちしてしまっていたようだ。
テーブルに置いてある飲み物をサッと二つ取ってゆっくりと怪しまれないように近付く。
コップを主の前に差し出して、微笑んだ。




「こんにちはお嬢さん。飲み物はいかがですか?」








真っ赤なドレス、黒いショール、セクシー系小悪魔みたいですごく嬉しかったけど、会場についてみたら周りはみんなおとなしめで、むしろこんなパーティみたいな衣装じゃなくて、審神者の正装みたいな感じで思いっきり私は目立った。




ただでさえ背が高いのに、5センチもあるヒールを履いてアップにまとめた髪も相まってぱっと見私の身長は186cm位はあるだろう。
ショックだった、視線がとても痛かった。
近寄ろうものならさっと避けられるのが分かった。




私は部屋の隅でパーティが終わるのをただひたすら待つことにした。




遠くから聞こえる笑い声が心に突き刺さる。
ああ、あの二人はおそらくうまく行くだろう。
そんなことを思いながら眺める。
その時だった。
ふと私の視界の中に一つのコップが入る。
そこから手、腕、肩と視線を送って顔を見るとどことなく加州清光に面影が似ている男性がにこやかにこちらを見つめていた。




誰だろう。さっきまでこんな人いなかったな……。




そう思っていると、飲み物はどうかと勧められたので、お礼を言って受け取った。




「隣、良いですか」
「あ、はい」




私に話しかけるなんて、もの好きもいるんだなぁなんて思いながら、コップに口を付ける。




「失礼ですが、私の名前はきよし……清水の清と書いて清と言いますが、あなたのお名前をうかがってもいいですか?」
「えっ? あ、ええと、審神者名は桜と申します。清さん 」
「桜さん。可愛らしい名前ですね」
「図体に見合わない名前です」
「そんなことはありません。私の目にはとても惹かれる対象として映りました」
「あ、ありがとうございます……」




優しそうに微笑みこちらを見上げてくる。
穏やかそうに見えるが、微笑み方と言うか雰囲気がやはり加州清光に似ている気がして親近感が持てた。
身長も恐らく同じくらいなんじゃないだろうか。
世の中には似ている人間が3人くらいいると言うが、刀の付喪神に似ている人もいるんだなぁなんてのんきに考えてみたり。




興味を抱いた私は、彼といろいろ話をしてみようと思い思い切って話を振ってみた。
審神者としての話、趣味嗜好、簡単なプロフィールなど色々。
彼は私が話に詰まっても嫌な顔一つせず、逆にマシンガンの様に話し込んでしまってもうんうんと最後まで聞いてくれた。




見守ってもらえているような安心感もありながら、それでいて異性としても魅力的に見せてくる話術にどんどん引き込まれていく。
なんだか、本丸で加州と話をしている時と同じ感覚になるなぁ。
そんな感情がふつふつと心の中に浮かび上がる。




加州は今日、嫌な顔一つしないで私をこんなにきれいにしてくれた。
いつも色々頼んじゃってわがままも言ってきたのに……。




加州に似てる男性なんて選んで来たらどんな表情をするのかな。
俺の代わり? とか突っ込んだりするのかな。




でも、私は人間だし、彼は刀だし、神様だし、どう考えたって……。
清さんと会話をしながらどんどん思考が進んでいく。




失礼だと思いながらも、心の中で加州のことが膨らんでいく。
そして、私は突然笑顔が作れなくなった。




「どうされました? 具合でも?」




清さんが優しく体を支えてくれる。
その手を払って私は答えた。




「ごめんなさい、今日はありがとうございました。私は本丸に帰ります。加州清光に言わなきゃいけないことがあるんです」




後ろで呼び留める声も気にせず、私は走り出した。







主の帰還である!
門番からの声に僕は驚いた。




あまりにも早すぎる。どういうことだ?




和泉守兼定に目配せをして急いで門前に出迎える。
帰宅した主は髪が乱れ、側に立つ僕らなど目に入っていないようなそぶりで本殿内を足早に進んで行く。
どうやら誰かを探しているようで、主の気がどんどん荒れていくのがじわじわと伝わってきた。




主の肩を掴んで動きを止めると、主が振り返って僕のマントの胸倉をつかむ。




「ねぇ、加州を知らない? 私、私……」
「落ち着いて、主。お見合いに行ったんじゃなかったのかい? こんなに早く帰ってくるなんて」
「私、加州に言わなきゃいけないことがあるの」




明らかに焦燥している様子にこれではいけないと、僕は微笑んで返した。




「どうしたんだい? そんなに慌てて。何かあったようだね? 僕でよかったら話を聞くよ」




優しく、そう落ち着かせるように主の肩をポンポンと叩くと、主は一瞬ハッと息を吸って謝りながらゆっくりと両手を離した。




「うん……ありがとう。でも、ごめんなさい」




主がゆっくり首を垂れる。
背後から視線を感じて振り返れば、和泉守が静かに首を振っている。




「主、ひとまず部屋に行こうか?」
「うん……」




その時だった。




「主!」




加州清光が本丸に帰還した。








正直飲み物を差し出した後はどうしたらいいか全く考えていなかった。




名前を聞くのは常識だろうと思ってひとまず名前を聞いて、軽く会話をして……そう思って話してみたら、存外主が乗ってきてくれたから、そのまま流れに任せて話をする。
いつもの様にただ話を聞いているだけじゃダメだと、名乗った清と言う役になり切って頑張ってアピールしたつもりだった。




つもりだったのに……主は突然俺の目の前からいなくなった。




「ごめんなさい、今日はありがとうございました。私は本丸に帰ります。加州清光に言わなきゃいけないことがあるんです」
「桜さん!?」




走り去る主を呆然と眺めながら、ハッと気づく。
主が向かった先は本丸。
加州清光は今ここにいる。




「まずい……」




俺は急いで主の後を追った。




本丸について玄関を通り、主の声がする方へ向かえば広間の前で歌仙兼定と和泉守兼定、そして主が立っている。
焦ったような雰囲気の主を宥めるように笑顔を浮かべる歌仙に対して、どんどんと表情が暗くなる主。
居てもたってもいられず、変装しているのも忘れて飛び出した。




「主!」




三人の視線がこちらに向く。




「清……さん? どうしてここに……?」




主が震える声で言葉を零す。
俺は前髪を戻して、ホクロを隠すテープを取った。
そして、耳飾りをもとに戻すと、主の表情が一変した。




嘘でしょ、と言わんばかりに青くなったり赤くなったりしている。
そんな反応になることは薄々わかっていた。




「……騙したの?」
「違う!」
「主、これには訳があるんだよ」




歌仙が主の肩を掴む。
その手を振り払って主が俺の前にやってきた。




「だまって、私は加州に聞いているの。加州、どうして……」




俺は大きく息を吸い込むと主の瞳を真っ直ぐ見つめて口を開いた。







「音がするとしたら、あれはまさにボンって感じだったな」




後日のある夜、和泉守が広間で酒を飲みながら、身振り手振りで話し始めた。




「やめてよ、酒が入るとそればっかり、恥ずかしいからやめて」




俺は叫びながら、和泉守から酒を取り上げる。




「なんだよ、俺と歌仙はお前のキューピッド役を務めたんだから、これくらいいいだろう話したって!」
「ばかねさだ!そのたび主が真っ赤になって部屋に閉じこもって大変なんだよ、やめてよ本当に」
「二人っきりになれる良い口実じゃねぇか」
「だから、だから……やめて、本当に……俺だって、恥ずかしいのよ……」




赤くなる顔をマフラーで隠しながら席に座る。
隣にいる大和守安定が嬉しそうな表情を浮かべながら肘でわき腹をついてきた。




「良かったね。想いが通じて」
「正直どうなるかと思ったけどね……」







そう、あの後俺は主に想いを伝えた。







『主を他の誰にも取られたくなかったんだ。好きだから』
『えっ』




その言葉に頭から湯気が出そうなほど真っ赤になった主がへなへなと床に座り込んで、ぽろぽろと涙を流して。




『私も加州が好き』




そう呟いたんだ。







主の自室で事の顛末を兼定二人も招いて話し、すべてを知った主はそれはもう声は怒っていたけど顔は笑っていた。
そして、兼定ズが退出した後、俺の隣に座り込んでそっと寄りかかってきたから、改めて告白すると、笑顔で主も受け入れてくれた。




『よろしくお願いします。清さん』




って。







「おっし、テメェら、清光は夜のお務めだ、さっさと寝ようぜ」




ふいに和泉守がそう言いながら立ち上がる。
その言葉に思わず耳を疑いながら和泉守始めその場にいる面々の顔を見る。
みんなそれぞれニヤニヤとした幸せそうな顔をしてこちらを見返してきた。




「え? 何? なんなの?」
「うん、そうだね。清光、僕たちは退散するよ。大丈夫、片付けも何もかもぜーんぶやっておくから」




安定がポンポンと俺の頭を撫でた後立ち上がって伸びをする。




「だから何なの?」
「いいから、お前はさっさと主のところに行けって言ってんだよ」




びしっと和泉守が指をさした先、寝間着姿で真っ赤な顔をしながらこっちを見つめる主と目が合った。




「ちょっと主なんて格好でここにいるの!?」
「だって、いつまでたっても加州が来ないからー」
「はぁ!? ちょっと、ちょっと何? 何なの」
「ちょっとお膳立てしてやっただけじゃねーか」




和泉守がクックと笑う。




「やめてよ! 何なの!? 俺そこまでヘタレじゃないよ」




叫ぶ俺の肩を抱えるように掴んで、和泉守が小声で言う。




「俺達の大事な、大事―な主を独り占めしたんだ。ちゃんと幸せにしなきゃ許さねぇからな」
「……っ」




バッと和泉守の腕から抜け出てみれば、いつもの笑顔でこっちを見ている。




「当然でしょ!」
「その意気だ!」




和泉守に背中を押されるようにして主の側に行った俺は、そっと主の手を取って夜の廊下を歩き始めた。