この世界の意味なんて



おはよう。

うん。彼なら無事だよ。そこまで深傷は負ってないはずだ。

けど、まだ起きてこないだろう。

君も昨日の夜に気づいたのだろう?

僕が、敵であることに。

君を襲撃に行ったのに、君は彼に守られていた。

君らはいつから、そういう仲だったんだい?

ハハハ。そう怒るなって。わかってるよ。

君たちは純粋に、この戦いに勝つために、結託したんだろ?

・・・なぜ、そんな悲しそうな顔をするんだい?

君の信頼を踏み躙っていったから・・・かな?

ごめんね。僕はそういう男なんだよ。

だけど・・・君を愛してしまった。

可笑しいよね。君らから見れば僕は人ならざるモノと同等の下郎なのにさ。

だけど・・・

君に出会い、君に仕え、共に過ごす時間の中で、君が愛おしいと、そう思う様になったんだ。

僕にも、こんな感情が・・・人としての感情が残っているなんて・・・知らなかった。

だが、それも今日でおしまいだ。

僕は、君を殺し、自分も死ぬ予定だった。

けど、それも失敗した。

そして、君に僕の正体がバレてしまった。

まさか、彼が噂の、君の婚約者だったとはね。

僕の読み違いだよ。見事に騙された。

こちらの姿がバレないよう、逃げるのに手一杯だったよ。

けど・・・遅かれ早かれ、僕もこの舞台から消えることになるだろう。

・・・どうせ消えゆく命なら、君にとどめを刺して欲しい。

愚かな僕を、君の手で裁いて欲しいんだ。

この銃で、僕を撃つ。ただそれだけでいいんだ。

なぁ、聞き届けてはくれないか?



はぁっ・・・なぁ、待て、待ってくれ!!

この手を離せよ!!

はぁっ・・・君・・・。どうして・・・

どうしてこんなことを・・・!!

僕は間違いなく君の敵だ!

なのに、なぜそれを知っていて、こんな選択を!!

なんで、僕じゃなくて、あいつを撃ったんだ!!

・・・君も不本意だったから?

君も・・・僕といることを望んで・・・それでって。

君・・・自分が今、何を言っているのかわかって・・・

っ・・・!!!急に抱きついてくるなよ!!

あぁ・・・くっそ・・・

君!2人で生き延びようって。

こんな状況下で、それがどれだけ無謀ことなのか、解っているのか!?

もう誰にも頼れず、日の当たる道なんて歩けないんだぞ!?

今までの様な贅沢な暮らしも、暖かな住処もなく、僕と一緒だなんて・・・何を言って・・・

今からなら、まだ間に合う。僕が君を唆して、脅して、連れ去った事にすればまだ・・・

・・・本当に連れ去って欲しいって・・・何を・・・

・・・そうか。君の望まない婚約だったのか。

君が逃げ出したいだけなら、その手伝いはしても良い。

君がそれなりに生活できる様に、手筈を整えよう。

宛てはある。そこまでならなんとか連れては行ける・・・が・・・?

・・・なんでそんなに怒って・・・ってこら、叩くな!

って・・・なんで泣くんだよ。

それは・・・気づいていたよ。けど、僕はそんな事、望んでならない。

君には想像がつかないだろうが、僕はこの手で沢山の命を奪ってきたんだ。

だから・・・僕はそんな事望めない。

現に、僕は君の命さえ奪おうとしたんだぞ!?

それなのに・・・どうして君は・・・

あぁっ!もう!!だから!!抱きついてくるな!!!

・・・なんで、君がそんなに泣くんだ・・・

君が泣く必要なんて、無いだろ・・・

僕なんかより・・・僕じゃない誰かが、君を幸せに・・・

・・・なんで僕じゃなきゃダメって・・・

・・・

・・・っ!!!わかったよ。

もう、こんな事終わりにしよう。

なぁ、覚悟はあるか?

この先、僕は君を守ってあげるけど、幸せは保証しない。

修羅の道だぞ?

・・・僕と一緒に居られれば、それだけで幸せって・・・

それは・・・僕も同じだ。君と離れるくらいなら、この世界に生きる意味なんてない。

2人で、どこまでも逃げよう。

君となら、どんな場所でも、生きていけるさ。